マンション管理士の独り言・・・607

「長期修繕計画の見方」

売買契約時までに長期修繕計画を提出すればまだましな方で、引渡し後2年目くらいに初めて管理組合に提出する売主さんもあったりするのが、北九州のお寒い状況です。
新規購入者や管理組合で初めて役員をする方は、長期修繕計画を見ても、“数字が沢山並んでいてよくわかんない”って方が多いと思われます。

長期修繕計画は、10~15年後くらいに実施する大規模修繕工事のために、その時にどんな工事を実施し、どのくらいの費用がかかり、その費用をどのように積み立てるかを計画したものです。
実際にかかる費用と長期修繕計画で必要とされる金額とで大きく乖離があり、余る分はまだいいとしても、工事代金が積立金では不足で賄えないってなると大変です。
最悪の場合には、一時金が発生したりしますので、そんなときの総会は大紛糾します。
「今までの理事会は長期修繕計画の内容をよく調べなかったのか?」「一時金を出さないでいいようにしているのが長期修繕計画だろ、何やってんだ」なんて感じです。

ですから、長期修繕計画は中身、つまり精度が重要になってきます。
“精度なんてわかんない”って人には簡単な長期修繕計画の見方を教えちゃいます。
まずは、数量が記載されているかどうかです。
数量の記載のない長期修繕計画が多いのに閉口します。例えば、全体のタイル面積や屋上防水の面積などが記載されていません。

続いては、どのような補修工事を行うのかの記載があるかどうかです。

屋上防水の補修でも、仮にシート防水だとして既存のシートを残してその上から張り込む工法(かぶせ工法)なのか、既存シートを全部撤去して新規にシートを張る工法(全撤去工法)なのかで、金額は大きく異なってきます。

数量もなければ補修方法の記載もない。
これでどうやれば金額が算出できるのか、全く理解できません。
おそらく今までの経験から“この大きさの建物なら、15年すればこれくらいが悪くなり、費用もこのくらいかかるべ”で出している事でしょう。

長期修繕計画はその時々の建築物価の変動や部材金額の高騰などで、工事費用が大きく異なってきますので、国交省では5年毎の見直しを推奨しています。
かりにつぶやき主が数量も補修方法も記載されていない長期修繕計画をベースに5年後に見直しを依頼されたら、ウン十万円もいただかなくてはなりません。
図面から外壁面積や屋上面積、タイル枚数等全てを拾い出さなきゃいけませんから、新規に作成するのと同じ手間ひまがかかります。
数量や補修方法がキチンと記載されていれば、そんなに手間ひまかかんないという事は容易にわかるっしょ。

つまり数量や補修方法が記載されていない長期修繕計画では、その分余計に管理組合からの出費が増えるということです。
もちろん精度にも大きく疑問符がつきます。
わざと数量、補修方法を記載せずに、5年後の見直しの際に利益を上げよう、ってしてるところもあったりします。
長期修繕計画の内容や精度にもっと興味を持たなきゃ、ですよ。