マンション管理士のひとりごと・・・910

マンション管理士の独り言・・・910

「改正宅建業法」

宅建業法とは、正しくは宅地建物取引業法と言いますが、本年4月1日より一部改正となりました。今度の改正で、マンション管理組合にも大きく関係するものがあります。
インスペクションです。

マンションに限らず中古の住宅の取引が行われる際、多くの場合買主売主双方ともに素人です。
仲介業者は仲介に関してはプロなのでしょうが、建物の劣化具合や瑕疵の状況についてはそんなに詳しくありません。
その辺りに詳しいのは、やはり建築士です。通常の場合、建築士は売買取引には関与しません。出番がありません。
それ故に、マンションを含め中古住宅の売買の場合、「現状有姿」という条件で取引されるのが通例です。

「現状有姿」の場合、引き渡し後、何か建物に不具合が出た時に、売主買主の間でどちらの責任かでトラブルになることもしばしばです。
建物の劣化状況を詳しく理解した状況下での取引とすべきとの考えから、インスペクションという方策が取り入れられました。
インスペクションとは、現在の建物の劣化状況を建築士が現地調査により確認して、売買の当事者がそれを分かったうえで取引を行おうというものです。
そのことが“素人でも安心して中古住宅を購入できる”となり、将来的には中古住宅の取引の活性化にもつながるという、考えからのものです。

具体的には、売買に際し仲介業者は、「インスペクションという制度があります。当社では、建築士を紹介出来ます。(もしくは紹介できません)」という事を当事者に報告します。
インスペクションの費用はおおよそ50,000円くらいとなっています。
インスペクションが実施されるとなれば、管理組合は対応を検討しなければなりません。
中古マンションの売買取引の対象には、専有部分のみならず、共用部分も含まれ、その管理は管理組合が行っているからです。

専有部分についてはその物件の売主(=区分所有者)が、その住戸内をインスペクションを依頼された建築士に検査確認してもらえばいいのでしょうが、共用部分についても当然ながら調査の対象になります。
「当マンションの○○○号室の売買が行われ、その住戸の区分所有者の△△さんからインスペクションの依頼を受けた建築士ですが、“建物躯体の中性化を調べたいので、外壁の一部をコア抜きさせてほしい”“防水状態を調べたいので屋上に上がらせてほしい”」などの要望が出されることが考えられます。

全てを断ることもアリです。しかしその場合、「共用部分については管理組合の許可が下りなかったから検査できませんでした」という報告がなされることになり、その結果、売買がもうちょっとで成約というところまで来ていたのに、購入予定者が“そんなら、や~めた”となることも考えられます。
後でその住戸の区分所有者から、“管理組合が調査を拒否したから売れなかったじゃん。責任とってよ”とクレームが入ることも十分考えられることです。

断らずに調査を許可した結果、「屋上防水の一部が劣化が激しく、防水層下まで水が回っている。」という調査結果が出た場合も同じ結果をたどります。劣化が激しい⇒しばらく補修は行われない⇒そんなマンションは買わない、となり、またその住戸の区分所有者から“責任とってよ”というクレームに発展します。

このインスペクションに対し、予め理事会や総会で対応を検討しておく必要があります。
管理会社さんの対応も現在のところまちまちです。
どの様に対応するかについては、また後日。