マンション管理士の独り言・・・1066

マンション管理士の独り言・・・1066

「マンション敷地売却」

もう5年以上お世話している管理組合さんに隣接した土地所有者さんから「宅地造成して売り出したいが、敷地の一部を売ってくれないか?」という打診がありました。
当該土地は、マンション敷地より1段低くなっていて、そこには受水槽が設置されているだけです。
このため毎年、受水槽清掃費用や点検報告のため10万円くらいの支出があります。
また、清掃のたびに断水が伴います。
折しも、この管理組合さんでは衛生面から給水方式を受水槽方式から直結増方式への変更を検討していたところです。
「売ってくれないか?」という打診に対して、前向きに検討しようとなりました。
しかし手続きや合意形成が大変です。

ざっと考えただけでも、
①マンション敷地は一筆なので分筆登記を行わなければならない
②分筆後売却予定の敷地の方は“みなし敷地”となり、特別決議である規約改正が必要。③敷地の一部と言えども、マンション区分所有者全員の持ち物なので、“処分”には全員の合意が必要
④ローンなど金融機関から融資を受けている方がいて、抵当権の目的物になっている。金融機関と交渉し、目的物の変更(面積縮小)について承諾を得なければならない。複数の金融機関の全てに応じてもらわなければならない
⑤購入希望者との間で、売却価格のすり合わせを行い、決まった金額で全員から合意を得なければならない
⑥直結増圧給水への変更工事の金額を出し、管理組合さんとして手出しがないように、収支を検討しなければならない
⑦一切の負担のない敷地として売却しなくてはならないので、受水槽の撤去なども行わなければならない
⑧購入希望者が予定する時期までに全ての手続きを終えなければならない
⑨説明会や臨時総会を何度も開催しなくてはならない

本格的に検討するとなると、上記以外にも沢山やらなければならないことが出てくると考えています。
また、①→②→③と進むものでもなく、順序も間違えてはいけませんし、①と②とを同時に進めなければいけないという事態も考えられます。

なにより大変と思われるのが、敷地売却に対しての区分所有者全員の承諾です。
理事会では、“いい話だから、反対する人はいないだろう”という声が大半ですが、敷地という「財産を売却する」という事にアレルギーを感じる人がいるかもしれません。
そのマンションは約50戸ですが、仮に49戸が賛成、1戸だけが反対であってもこの話は流れちゃいます。
そうなった時に、“せっかくいい話だったのに、○○さんたった一人反対したので、話が流れちゃった”とマンション内で対立が生じることも考えられます。
事実、つぶやき主は約90戸でたった一人反対したために、お流れになった議案を経験しています。

現在は、購入希望者の方でマンション敷地の一部を取り込んだ区画割プランニングの最中です。
正式なオファーがあってから活動開始ですが、気が遠くなるような案件です。