マンション管理士の独り言・・・1109

マンション管理士の独り言・・・1109

「べき論」

5月最後の週末に3件の総会に出席してきました。北九州にコロナウィルスの第2波が押し寄せている状況ですが、いずれのマンションでも結構な数の組合員が参加されました。
特に日曜の総会では、屋外駐車場にソーシャルディスタンスを確保しパイプ椅子を並べて開催したのですが、5月末とは思えないような寒さで凍えてしまいました。いつもはホールで行うのですが、3密を避けるための苦肉の策でした。途中で「寒い、寒い」という声があがり一旦小休止をとり、その間に上着を羽織ってきてもらいました。

総会の議案は、理事会が作成します。そのように管理規約になっています。どこの管理組合でも一緒です。
理事会で検討し成案化させ、総会で「理事会では、この議案を承認してもらうことが管理組合にとっていいことだと思うので提案しました。承認お願いします」というスタンスです。
仮に修繕工事をどこかの工務店に発注することを議案化するという場合、3社を並列し、「この3社の中でどこに発注しますか?」というふうにはやりません。
「理事会で共通仕様書で見積もりを3社から取得した結果、A社が良いと判断しましたので、A社に○○の金額で△△の内容で発注することをご承認願います」とするのが普通です。これを「総会で3社の中でどこに発注しますか?」とすると大人数が集まる総会では中々話がまとまらないからです。
“理事会というのは、その議案提出まで行うのですよ。理事にはそこまで任せているんですよ”そこまでを含めて総会で役員を承認しているという意識が欠如している方が多いのが気になります。

「2社から見積もりを取りました。その結果、A社が良いと判断しました」とすると、「2社より3社から見積もりを取るべきだ。」「なぜB社が振るい落とされたのか?比較表を作って皆に開示すべきだ」「A社の見積もり詳細を開示すべきだ」「総会に諮る前にアンケートを実施すべきだ」などの意見が出ます。
どのご意見もごもっともです。しかし“べき論”です。“べき論”には切りがありません。
理事会では見積もりを提出してもらう業者は多い方が良いのはわかっているけど、見積取得に際してそれだけ手間暇がかかるし、断らなきゃいけない業者がそれだけ増えることになる、などを総合的に判断し2社から見積もり提出してもらったということです。
このあたりのプロセスも任せてくれるってことで理事就任を承認したんでしょ、ってことです。
理事長はじめ理事会に、「1年間ご苦労様でした。有難うございました」という感謝の気持ちが少ない組合員が増えたような気がします。

口を開けば、「組合員全員が積み立てたお金だから、皆の合意のもとに使わなきゃ」とこれもごもっともですが、現実的にはその都度総会を開くわけにもいきません。
総会を開いて承認を得るべきというのがベストだけど、理事会でこれくらいは判断させてよ、って事は実務的にはあり得るのです。そのために管理士や管理会社がいて、理事会にアドバイスするのですが、「理事会で判断せずに総会で承認を得るべきだ」という最強の“べき論”には太刀打ちできません。

「“法務省は、5月の総会をコロナウィルス対策のため延期しても違法ではない”という見解を出しているのに何故この時期に総会を開催するのだ」「寒空の中総会開催し、風邪ひいたらどうしてくれる」なんていう意見もありました。
延期ということも検討した結果5月中に開催したのです。寒けりゃコート羽織ってきたら、です。
理事長の専権事項の開催時期についてクレームつけるなんてお口アングリです。
理事長や理事会に対して、もっと感謝の気持ちを持たなきゃ、です。