マンション管理士の独り言・・・1121
「つみつくりなつくり」
先週の土日に大規模修繕工事に際し、事前段階として共用部であるバルコニー調査を行いました。前もって不具合があるかないかのアンケートを実施したうえでの調査です。
100戸超のマンションなので回答も80戸以上からと大量に寄せられました。
その中から共通している項目別に代表的な住戸をピックアップし20戸を確認させてもらうことにしました。
1級建築士さんとペアで各戸30分平均、土日朝早くから入室し不具合個所の確認です。
不具合の多くは上裏からの白華現象や、タイルの浮きですが、バルコニー腰壁下部の排水溝の排水の流れが悪い住戸が見られます。
水は高いところから低いところへ流れますので、キチンと勾配さえとれていれば、よほどゴミが溜まってない限り排水が流れないなんてあり得ません。
勾配が緩やかな個所もありますが、流れないほどフラットではありません。
ゴミつまりが原因です。
しかし排水が流れないお宅ではこのゴミつまりが解消できないのです。
排水竪管に繋がっているドレン管がその住戸にはないのです。
売主がケチってドレン管を2住戸に1つとしているのです。
火災時に蹴破ってお隣りへ逃げ込む際の隔て板の下部を排水溝が通って、そこからお隣さんの排水ドレン管へ流れる仕様になっているのです。
通常は1住戸にバルコニーに対し1つのドレン管を設置するのが当たり前ですが、これを2住戸に1つとしているのです。
ドレン管がない住戸では掃除のしようがありません。しかも自分宅のバルコニーからの排水がお隣さんのバルコニー排水ドレン管へ流れて行っているという負い目もあり、お隣さんへ「バルコニー排水が流れなくて困っているから、コマめに掃除してください」なんて言えません。
ドレン管が設置されている住戸でも面白いわけがありません。「自分宅のバルコニードレン管にはお隣のゴミが混ざった排水が流れてくる。なんでそれを私が掃除しなきゃいけないの。お隣さんのペットの抜け毛も混じっている。うちは飼っていないのに」という具合です。
知らず知らずのうちにお隣さん同士が険悪な雰囲気になってしまいます。
マンション購入してしばらくは双方ともに気が付きませんが、やがてドレン管がある住戸の方が先に気が付きます。それから面白くない日が続きます。
「廊下ですれ違った折に、“いつもバルコニー排水の件でご迷惑おかけします”くらい言えばいいのに、いつも知らんぷり」って感じです。
やがてドレン管がないほうの住戸の方も気が付き、「お隣さんはいつも愛想悪かったけど、これが原因だったのね」です。
韓国には“仲のいい隣人はいない”という格言があるそうです。それで何かと日本へイチャモン付けてくるのかもしれませんが、何事もない状態でさえ仲が悪いのが隣人です。
それを売主のこんな“ケチった”仕様で快適なマンションライフを崩されてはかないません。
全く、「つみつくりなつくり」です。
何となくお隣さんが不機嫌そうだったら、バルコニードレン管を調べてみましょう。
こんな仕様が結構多いから困ってしまいます。