マンション管理士の独り言・・・1166

マンション管理士の独り言・・・1166

「新春早々、遮音性能の話」

「丑」年です。ウシはもともとは“チュウ”と読み、果実などがまだ芽吹いていない様子を指し、今から満開になるよ、末広がりだよ、って年だそうです。コロナ、コロナで終わってしまった昨年。縮んだ分だけ大きくジャンプしたい年にしたいものです。

素晴らしい枕詞で始まった割にはまたボヤキみたいで恐縮ですが、もう少し遮音性能について・・・。

音の伝播には2種類あります。一つが固体伝播音、もう一つが空気伝播音です。

話していて相手の声が耳に届くのが空気伝播音。分譲マンションでは、中住戸などは外に接する面が2方向しかないので、窓のないキッチンやお風呂、トイレなどの間取りのなることが避けられず、このため換気は住戸内に排気ダクトを造って外部へ排気しています。

空気が通るダクト(風穴)があるので、夜間どこかの住戸のシャワーの音が聞こえてくる、なんて現象がおこります。

一つの建物をいくつにも分けて住戸を造る、外に接する面が中住戸で2方向、角部屋でさえも3方向という分譲マンションの特殊性があるので、ある程度は仕方ない一面があります。

部屋うちに排水竪管が来るような場合は、竪管に断熱材を巻いて、さらに石膏ボード2重貼りなどと遮音対策しています。

固体伝播音は、床や壁などくっ付き合った物質を通して音が伝わる、という現象です。上階からの子供の飛び跳ね音などはまさに固体伝播音の代表格です。

固体伝播音を防ぐために、多くのマンションではシステム床を採用しています。

床と壁をくっつけずにホンの数ミリ離して施工します。床を自立させ、壁との隙間を巾木で処理する工法です。これにより、壁や床からの固体伝播音を少しでも緩衝させようとの工夫です。

それでも床コンクリート厚を厚くすることには適いません。

売主さんは竣工後には、ぜひ環境調査を行っていただきたいものです。

売主さんは、ただ一言、設計士さんと施工会社さんに“竣工後に環境調査をやってね”って言うだけでいいのです。簡単なことです。

環境調査というのは、実際に建物が竣工したのちに無作為で選んだ特定の住戸の床を騒音発生器(タイヤの小さいもの)で叩いて、階下でのdb数を測定するというものです。

売主さんや設計士さん、施工会社さんは、階下への遮音性能がどのくらいなのかを分からない状態で商品(竣工後の建物)を売ってはいけません。

買主からお金をもらって瑕疵のない商品(竣工後の建物)を引き渡す義務のある売主として、その商品の性能がわからいまま買主に引き渡ししちゃ、いけないでしょ。

無責任すぎますし、商道徳に反します。

未完成物件を売ってんだから、竣工後の性能を把握し、購入者へ開示するのが当たり前です。

「環境調査の結果、パンフレットに記載していた遮音性能が確保できていなかったらどうしよう」って思っているのでしょうが、パンフレット記載どうりの遮音性能になるように設計・施工すればいいじゃん、って話です。

竣工後に、騒音トラブルが発生した場合、購入者へ購入段階で説明した遮音性能が確保できているかどうかを竣工後に調べることすらしない売主さんの責任は問われず、住民間同士のトラブルに矮小化させ、そのトバッチリが管理会社さんへ向かうって風潮はどう考えてもおかしい、が初夢でした。

嫌な歳になりそう。