マンション管理士の独り言・・・1217

マンション管理士の独り言・・・1217

「他山の石」

熱海地方を襲った集中豪雨により、大規模ながけ崩れが発生し、多くの方がお亡くなりになり、また未だに20人近くの方が行方不明になっています。

一人でも多くの方が早く見つかることをお祈りしています。

大規模がけ崩れの原因の一つとされているのが、盛り土の様です。

市へ届け出た量の3倍もの土砂が搬入されたようで、しかも産業廃棄物が混ざっていたというから開いた口が塞がりません。

盛り土を行ったのは、以前の持ち主である不動産会社A,そのAから購入したのが現在の所有者Bのようです。

Bは、売買契約当時Aから盛り土であったことを聞かされていないとして、Aに対し法的手段をとるようです。

AとBとの不動産売買契約に仲介業者が存在していたら、その業者も重要事項説明義務違反に問われる可能性があります。

BがAに対し訴訟を起こし、それが仮にBの全面勝訴となったとしても、それでAは免責と言うわけにはいかないと考えられています。

この争いは、あくまでもAとBという当時者間での訴訟であって、その結果が直ちにがけ崩れによって損害を被った被害者に及ぶわけではないからです。

Bには現在の所有者としての、管理責任があります。構造物管理責任です。

この構築物管理責任は、無過失責任とされ、仮にBが盛り土部分の管理メンテナンスに十分に気を付けてそれなりの対応を行っていたとしても責任は免れません。

Bは盛り土とは知らず、仮に盛り土と分かっていたら購入していなかったかもしれず、また日頃のメンテナンスを十分に行っていたとしても責任があるのです。お気の毒としかいいようがありませんが、法律ではそのようになっているのです。

この熱海の大規模がけ崩れ事件がマンションに大きな教訓を与えています。

何度もつぶやくように、もしマンション外壁タイルが落下し、通りがかった人や車両に損害を与えた場合は、管理組合は今回のBと同じ立場となり、責任を負わされちゃいます。

下手っぴいな職人によって貼られたもの、工期不足で突貫で貼られたもの、十分な養生期間が確保されずに貼られたものなど、様々な手抜き、或いは施工不良によって貼られた外壁タイルがもし剥落し人や物を傷つけたら、タイルを貼ることに何の関与もしていない管理組合が責任を負わされちゃうってことです。

不合理で不条理で納得できないかも知れませんが、法律ではそのようになっているのです。

竣工後2年以内ならば、瑕疵担保責任期間内であるため売主に責任を負わせることが出来るかもしれませんが、2年以内にタイルが落ちるなんて本当にレアケースです。

マンション購入者は、売買契約時にタイルが上手に貼られているかどうかを確認すべき手段はありません。

それだけに売主さんや施工会社、更には設計会社も責任もってしっかりした建物を引き渡す義務があります。

十分な工期が確保されているか、養生期間は適正か、現場管理はキチンと行われたのか、タイル引張試験は行ったのか、その結果は?など購入者も建物の施工にもっと気をかけなきゃ、です。

マンションを購入するっていうのは、専有部分を取得するのみならず組合員として共用部分の管理責任も負い、もし何かあれば責任を負わされるってことです。

「ウチのマンションのタイルは落ちないだろう」って根拠もなく能天気に構えてちゃいけませんよ。