マンション管理士の独り言・・・1230

マンション管理士の独り言・・・1230

「かぶり厚」

分譲マンションは多くの方がお住いで、且つ不特定多数の方の出入りがあります。

このため火事があっても大惨事にならないように火に強い建物でなければなりません。

建築基準法では耐火構造物と定められています。従って鉄筋コンクリートで建てられます。最近では三井ホームが木造で耐火構造物を建てたという事例もあるようですが、鉄筋コンクリートが昔からも今後もずっと主流なのは間違いありません。

鉄筋コンクリートとは、文字通り鉄筋とコンクリートで構成されています。

圧縮強度には強いけれど引っ張り強度には弱いコンクリートと、反対に圧縮には弱いが引っ張りには強いという鉄筋が、それぞれ相手の弱い部分を自分の強い部分で補うというものです。

また、高アルカリ質(PH14程度)のコンクリートで鉄筋を覆うことで、酸化すると錆びちゃう鉄筋をガードするという側面もあります。

しかし建築当時は高アルカリ質なコンクリートであっても、長年の酸性雨や排気ガスなどで徐々にアルカリ質が失われていきます。

これはコンクリートの中性化と呼ばれます。中性化してもコンクリートそのものの強度が落ちるわけではありませんが、内部の鉄筋が酸化しやすくなり、ひいては発錆する危険が高まります。

鉄でできている鉄筋は、空気に触れ水分に浸されると錆びちゃいます。

錆びると体積が2,4倍くらいに膨らみ、その結果周りのコンクリートを押し出します。

これが爆裂と言う現象です。

鉄筋が錆びる→爆裂を避けるために建築基準法では、鉄筋を覆うコンクリートの厚み(かぶり厚)を規定しています。

かぶり厚とは、コンクリート表面と中に入っている鉄筋までの距離とも言い換えることが出来ます。

建築基準法では、耐力壁以外の壁または床は2㎝、耐力壁・柱は3㎝、直接土に接する壁・柱・床は4㎝、基礎は6㎝です。

このかぶり厚を確保するために、現場ではスペーサーと言って刀の鍔みたいな輪っかを鉄筋に通して工事を行います。

スペーサーを通すのでかぶり厚が確保されるかと言うとそうもいきません。

全部の鉄筋にスペーサーを通すわけにもいきませんし、また型枠にコンクリートを打設した後に、コンクリートが下まで入り込むようにバールの様な長い棒でかき混ぜるのですがこの際、スペーサーが斜めになってしまいかぶり厚が確保されていないということが起こることが見られます。

爆裂したコンクリート片が下に停めてあった車輛が傷ついたなどの場合にかぶり厚がクローズアップされます。

かぶり厚が建築基準法を満たしていない場合に、何故管理組合が責任を負わなきゃならないという議論が巻き起こります。

そもそも建築基準法さえ満たしていないものを建てた事業主が責任を負うべきだ、ってことです。これに対してスンナリと責任を認める事業主をつぶやき主は知りません。

今後も知りません、ってことが続きそうです。