マンション管理士の独り言・・・1271
「他人の褌」
新規分譲マンションでは、高い防犯性能を誇るものが多いようです。
防犯カメラが何台ついているとか、警備会社と契約しているのでもしもの時には15分以内に現場へ駆けつける、というようなキャッチフレーズです。
しかしよく考えてみると、これらは売主さんはその段取りをするだけで、あとのリース料などは全て管理組合負担で、つまりは区分所有者が負担する毎月の管理費から支出されています。
マンション売主さんにはイニシャルコストなんてかかっていません。
従って防犯カメラが沢山ついているからとか、警備会社と契約していることなどがマンション販売価格に上乗せされていてはいけないものです。
「売主として警備会社と〇〇の契約をしてあげたので、後のリース料などの支払いは管理組合さんでやってね」です。
エレベーターも同様です。
「エレベーターが通常より多くついているので待ち時間が短くてすみます。」なんて営業マンは言います。確かにその言葉自体は間違ってはいないけれど、毎月のメンテナンス費用は管理費から支出されているのです。
台数が増えればそれだけメンテナンス費用も嵩むことになります。
1階2階の人から見れば、「自分や家族はエレベーターなんて使わないのに、毎月負担する管理費の3分の1がエレベーターメンテナンス料に使われてしまってる」なんて恨み節を言いたくなる状況です。
この他、宅配ボックスやインターネット接続費用、浄水器などリース契約となっているものは、毎月のリース料は管理組合負担なのでこれら設備があることをあたかも自社マンションが優れているってアピールするのには、ちょっと違和感を感じちゃいます。
「管理組合が負担するものを自社の手柄にしちゃ、ダメだよ」ってことです。
しかし、これら設備を全く付けずに、ストリップ状態で分譲販売し、「必要なものを管理組合さんで話し合って決めてくださいね」では何も決まりません。
決まったとしても長い時間とエネルギーが必要です。
ここはやはり、分譲当初から売主さんに用意していただき、「このマンションにはこれら設備が適正だと思います。そのためのリース料が月額〇〇円必要です。それを理解してマンション購入してくださいね」ってしてもらわなくちゃです。
購入者は、それが本当に必要な設備なのか?オーバースペック(余分な設備や数)ではないのか?反対に必要と考える設備が付いているのか?などをしっかり吟味することが必要になります。
マンションが竣工して解体されるまでのライフサイクルコストという視点から見ると、マンション建設費などよりも維持管理費の方が倍以上の費用が必要になります。
結婚相手を選ぶのに、見かけは素晴らしいが、その見かけを維持するのに多額のお金がかかるって人は遠慮するでしょ、ってことです。