マンション管理士の独り言・・・1289
「こんなの出来っこない」
こんなの出来っこないシリーズです。
今回は総会を開催せずに書面による議決権行使だけで済ましちゃおうって事についてです。
区分所有法は、集会主義(=総会主義)を採っています。
マンションライフのルール決めや共用部分の維持管理などについては皆で集まって話し合って決めましょう、ってことです。
コロナ禍まではそれが当たり前でしたが、大勢で集まることが禁止され、また仮に集まっても短時間で終わるように心掛ける、となると実質管理組合総会は開けません。
そこで考え着くのが、総会を開催せずに詳しく説明された議案書を読んで、書面による議決権行使形式のみにしようというものです。
初めから、「今回は総会を開催せずに書面行使のみでの議決権行使とします。議案書をよく読んで各議案ごとに賛成か反対かを記してください」とするものです。
これは、実務的には出来ない事ではありませんが、管理規約には違背する行為です。
管理規約でも、総会に代わり書面での議決権行使のみの方法を認めていますが、この方法を採用するにはとてもハードルが高いのです。
総会を開催せずに書面での議決権行使のみということを区分所有者全員が承諾しなければならないとなっています。
全員の承諾を得るというのは実務上とても難しい行為です。仮にやろうと思っても、その手間暇考えたら、総会を開催する方がずっと楽となっちゃいます。
仮に全員が総会に代わり書面での議決権行使形式を承認したとしても、直ちに各議案が承認されたわけではありません。
管理規約に従ってそれぞれの議案について過半数や4分の3以上の承認を得ることが必要です。
また、区分所有法第43条では、「管理者(=理事長)は集会において毎年1回事務の報告をしなければならない」と規定されています。この規定は強行規定とされ、報告を2年に1度に変更したり、また集会に変えて書面で、などとすることは出来ません。
要するに総会を開催しなくても事務報告のための集会は開催しなければならないことになります。
管理会社やつぶやき主に、「今回は皆を集めての総会開催は止めて書面による議決権行のみとしよう」と理事会さんからの要望が出されます。しかし実務的には総会を開催しないというのは法律や規約上も無理なのです。
「コロナ禍も折、出席は控えていただき、書面による議決権行使をお願いします。またご出席される場合は、熱がないこと、マスク着用。更には1住戸お一人のみのご参加に制限させていただきます」くらいが限界です。
では、総会を開催せずに書面による議決権行使のみでやっている管理組合はないのか?って言われると、そこは、ムニュムニュ。
集会主義の理念はわかりますが、コロナ禍との共存という生活スタイルに変化した現在、もっと柔軟な対応ができるよう区分所有法の見直しが待たれます。