マンション管理士の独り言・・・1291

マンション管理士の独り言・・・1291

「やってやれないことはないが、かなり難しい」

前回までとは異なり”やってやれないことはないけれど、とても難しいこと”です。

理事長が不良入居者相手に訴訟を起こしたり、勧告や指示を行うことです。

標準管理規約第60条4項では、「管理費などの滞納者に対し理事長は理事会の決議を経て訴訟その他の法的措置を追行することができる」と規定されています。

”できる”としているところがミソです。

これが”しなければならない”となっていれば、理事長は必ず実施しなければなりませんが、”できる”なのでやってもいいし、やらなくてもいいよ、ってなっています。

更に、第67条では、管理規約を守らなかったり他の組合員の共通の利益に反するような行為を行う、いわゆる不良入居者に対し理事長は「その是正のため必要な勧告・指示・警告を行うことができる」「組合員や第3者が共用部分や敷地に不法行為を行ったときは、理事長は理事会の決議を経て法的措置を講じることができる」と規定されています。

ここも”できる”となっていることに注目です。

しかし”できる”となっていても、不良入居者だと言っても、実際に他の組合員相手に訴訟を提起したりする理事長さんはあまりいません。

輪番制でしかも1年総入れ替えの理事さんの中から、互選で選ばれた理事長さんです。

しかも互選と言ったって、誰もなる人がいないから、「あみだくじ」っていうパターンがほとんどです。

手を挙げて”今年度は私が理事長を務めます”なんて立候補する方にはしばらくお目にかかっていません。

決して積極的に理事長に就任したわけではないので、”あまりトラブルに巻き込まれたくない””今年でなく来年やってよ”っていうのが本音です。

「他の組合員相手に訴訟を起こしたくない、しかも原告として理事長〇〇って名前まで記載されることになる。勘弁してよ」「訴えられた相手方から、恨まれたくない」「車をパンクさせられるかもしれない」「逆恨みされて家族に危害が及ぶかもしれない」って言葉が並びます。

不良入居者に対する勧告や注意は、理事会と並列でつぶやき主の名前で行います。

理事長名でなく、理事会名です。

また、その方へ直接面談して注意を行うときもつぶやき主が行っているのが現状です。

理事長はじめ、理事さんが同席することもありません。

区分所有法や標準管理規約が掲げる「マンション購入者が共有関係となる共用部分や敷地の維持管理、さらにはマンションライフのルールは自分たちで決めましょう。更にトラブルが発生した時も自分たちで解決しましょう。自治ですよ」という理念は理解できます。

しかし「自治」実現には、かなり高いハードルがアチコチにそびえている、っていうのが正直な感想です。