マンション管理士の独り言・・・1304

マンション管理士の独り言・・・1304

「私は役員になれますか?」

現に役員さんとして積極的に活動されている奥様からの質問です。役員就任要件についてですが簡単そうで結構奥深い難問です。

管理規約(標準管理規約35条2)を見てみると、「理事及び監事は組合員の中から総会で選任する」とされています。

以前はこれに「現に居住する」というのが付いていましたが、役員の成り手不足や賃貸率が上がってきている現状に照らし「現に居住する」っていうのが外される傾向にあります。

役員になるためには、先ずは組合員でなければなりません。

では組合員の要件とは?管理規約(標準管理規約ならば第30条)は「組合員の資格は区分所有者となった時に取得し(後略)」と記されています。

組合員=区分所有者と言うのはわかりました。

更に掘り下げて区分所有者とは?区分所有法第2条2において「この法律において区分所有者とは、区分所有権を有するものをいう」と規定されています。

ここでハタと滞ってしまいます。

区分所有権を有するもの?って誰を指すの?

多くの場合は、その住戸の購入者です。しかも購入した人が登記名義人だったら云うことありません。

しかし日本の登記制度では、公信力がないとされています。日本では登記名義人が真の所有者でないってことはよくあることです。

亡くなったお爺ちゃんの名義のままの家だとか、相続の都度名義を変えてないから今では誰が真の所有者なのかわからない、なんて不動産は沢山あります。

また、「区分所有者は登記名義人とする」なんて管理規約見たことないし、もしそうするならばその都度謄本を管理組合に提出しなくちゃ、となります。それに日本の登記制度からしても合理性を欠く規定になってしまいます。従って登記名義人は必ずしも区分所有者であるとは限らないこととなります。

現に税対策で息子さん名義で購入し登記上も息子さん名義になっているが、本当はお父さんのものだとか、息子が買ってくれてお母さんが住んでいる、息子名義だが固定資産税などは母である私が負担している、なんてマンションは沢山あります。

賃借人なら別ですが、端から見ても誰が区分所有者なんてわかりません。

実際の管理の現場では、現に居住している方が、「私が区分所有者だから私が組合員」と言えば管理組合はそれを受け付けることとなります。

また、売買契約の買主欄に名前のある方や、登記名義人の方など区分所有者となる要件を満たした方が、「私ではなく〇〇さんが本当の区分所有者です。〇〇さんが管理組合員となります」と申告すれば、”その〇〇さんを組合員みなす”と整理するのが一般的です。

本当ですか?あなたは占有者であって区分所有者じゃないでしょ?なんて調べる義務は管理組合にはありません。

理事会の方針に反対の組合員が、”〇〇さんは区分所有者でないから役員に就任できないはず。そんな人が属している理事会の決定は無効だ”なんていうことがあります。

残念なことに結構な頻度であります。

どこでも重箱の隅を突っつく方がいるので困ったものです。