マンション管理士の独り言・・・1393

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「議事録閲覧・・・その2」

前回議事録閲覧について、閲覧できる人・出来ない人、閲覧できる書類・出来ない書類、閲覧については相当の日時を指定できることなどを呟きました。

今回は、閲覧方法についてつぶやきます。

かつて閲覧方法は、指定された場所で見るだけか書き写すしか認められていませんでした。しかし、コピー機の普及などもアリ謄写(コピー)を認めるかどうかで判断が分かれていました。

東京高裁平成23年9月15日の判決です。

謄写を認めてほしいという原告の主張は、以下の通りです。①規約に謄写が認められていないのは、その当時はコピー機が普及していなかったものであり謄写請求権を否定する趣旨ではない。②管理組合の健全な活動を目指し組合員へ監督是正の機会を与えるという閲覧請求権の趣旨からしても謄写を認めるべきだ。③閲覧しか認めないということならば、閲覧に要する時間も長くなったり、複数回の閲覧となり合理的ではない。というものでした。

これに対し裁判官は、「理事長は閲覧請求に対しては社会通念上相当と認められる時間閲覧させればそれでいい。閲覧時間を短縮させるために謄写させるという主張には理由がない」とし、謄写を認めませんでした。

これと同じく、東京地裁平成19年3月19日の判決でも謄写請求は否定されています。

しかし、東京地裁平成21年3月22日及び東京高裁平成14年8月28日の判決では、謄写の権利を肯定している判決もアリ、裁判例は分かれていました。

東京地裁平成26年9月18日の判決です。閲覧請求に謄写に加えてデジタルカメラによる撮影を認めてほしいというものです。謄写はダメでも撮影は認めてよ、です。

これに対し、裁判官は、「確かにデジタルカメラでの撮影ならば費用も時間もかからないのでその分だけ管理組合の負担も軽減される。しかし規約には閲覧のみが規定されていて謄写は規定されていないので認められない」と判事しました。

大阪高裁平成28年12月9日の判決では画期的な判断が示されました。

閲覧と謄写を求めた原告に対し、管理組合が閲覧は認めるが謄写は認めないとしたことで訴訟に発展しました。

結果から言えば、判決は写真撮影も認められました。

理由は①管理組合は社団(権利能力のない)だから民法645条(受任者の報告義務)の受任者となる②マンション適正化法では、管理組合に対し帳票の保管や経理の透明性を求めている③一般社団法人には、個々の社員に閲覧謄写請求権を認めており、社団にはこれが類推適用されるというのが通説、以上3点から謄写を認めるというものです。

これまでの裁判例では、「全て規約に内容による。規約で謄写を期待していないので謄写は認められない」という保守的なものが多かったのですが、踏み込んだ判断と言えます。

随分と回りくどく、遠回りしたようですが、デジタル技術の発展にやっと追いついた当たり前の判断になったようです。

議事録閲覧方法についてもそうですが、コピー機やデジタルカメラなどの撮影、複写器具の発達に法律や規約が追い付いていないことが遠因です。

これから更にネットなどによる閲覧方法が増えてくることが予想されます。