マンション管理士の独り言・・・415

「駐車場の引き継ぎ」

北九州ではほとんどのマンションで駐車場充足率100%です。
つまり1住戸に1台は駐車区画が確保されています。
100%どころか120%を超えているマンションなんていうのも珍しくありません。
そして何年かすると住戸(専有部分)を売ったり貸したりする区分所有者が出てきます。

その時に使用していた駐車区画を次の買主や借主へ引き継げるかどうかはそのマンションの管理規約によって異なります。
次の方へ承継できるとしたものもあれば、管理組合へ返却するとしたものもあります。
標準管理規約では譲渡の場合と貸与の場合とで扱いが異なります。
専有部分の譲渡の場合は、もうその区分所有者は永遠に区分所有関係から離脱するので使用していた駐車区画は管理組合へ返してよ、貸与の場合は例えば転勤などで専有部分を貸すけれど3年したら戻ってくることもあるじゃない、だから借主へ引き継げますよ、としています。

これで駐車区画の使用については整理できている、なんて思うと大間違いです。

管理の現場ではこの程度の決め方じゃ全然物足りません。
仮に譲渡の場合は引き継げず、一旦管理組合へ返却となっていたとして、じゃあその空いた駐車区画をどのように決めるのかが規定されていません。
抽選なのか先着順なのか?
もし抽選ならば、売りに出された住戸の新しい購入者はその抽選に加われるのか?
仮にABC3人で抽選になったとして、Aが抽選に当たった場合、外れたBが“今使ってる所よりAの場所がいい”と希望した時の扱いはどうするのか?
順繰り順繰り何回抽選を行うのか?

また、どのタイミングで抽選を行うのかも重要なことです。
住戸を売り出す売主からすれば、“駐車場は敷地内のどこになるのかまだわかりません”として売り出すより“駐車場は○○番です。”とした方が売り出しやすいに決まっています。でもあまり早く決め過ぎちゃうと、その住戸がいつまで経っても売れなかった時に抽選で当たった人は長い間待ちぼうけを喰らっちゃうし、なんてこともあります。

さらに、売り出そうとする人が転居しちゃって駐車区画を使用しない時の扱いも難しいものです。
“もう駐車区画を使用していないのだから使用料を払わない”と言いたくなるのは当然ですが、駐車場使用料が例え何カ月でも入らないのは管理組合からすると避けたいです。
そこで「駐車場使用料を支払わなければ次の買主に承継できない」としている管理組合もあれば、「次の使用者が決まるまでは駐車場区画の使用の有無にかかわらず現在の区分所有者がその使用料を支払わなければならない」なんてしているところもあります。

駐車場区画を承継できるとしているマンションだってトラブルは生じます。
仮に今は軽区画や機械式駐車場を使っているが、将来は平置きの普通区画に移動したいと思っている人がいて何年もの間、理事会へその希望を出していた場合で、住戸の譲渡により“いい区画が空いた”と思ったらその住戸の新しい買主がそのいい駐車区画を承継してしまった。
「自分は何年も前から、移動したいと希望を出していたのに、新参者がさっさと引き継いじゃった。不公平じゃん。」揚句には、「こんな管理組合の活動になんて協力しない」となってしまいます。

恐るべし駐車場。
その時の理事会が頭を抱えないように、事前にしっかりとした規約に改正することをおススメします。