マンション管理士の独り言・・・524

「パークハウスグラン南青山」

三菱地所レジデンスが設計を行い自らが売主となり、施工は鹿島、と日本を代表するそうそうたる顔ぶれのマンションです。
このマンションでコンクリート打設時に、予めくり抜いておかなければならないコアを抜いていない箇所が600も発見され、とうとう販売中止、既契約者へは解除の申し入れ、そして1年以上かけて補修工事を行うという事態にまで発展しました。
総戸数86戸のうちもうすでに83戸が売れていて、予定では3月半ばの引き渡しだったようです。
最多販売価格帯が1億4000万円、最高価格が3億5000万円という超高級マンションだったようです。

コアというのは分かりやすく言えば、室内側エアコンと室外機をつなぐときにコンクリートに予めくり抜いている管のことです。
コンクリート型枠を組む段階でこのコア部分のスペースをとらずにそのまま打設してしまったようです。

引き渡し目前だったので、売り主側からキャンセルするためには手付金倍返しというわけにはいかないでしょう、売買代金の20%の違約金支払いが適用される事だと思います。それだけじゃ、済まないかもです。
でもお金の問題じゃないでしょう。
これくらいの金額になると現居を売却して購入という人もいるでしょうし、三菱との間は買主であっても現居売却については売主となり、立場が入れ替わってしまいます。
この買主さんにも迷惑をかけちゃうことになります。
その他ローンを何とか組んだ人や、早々と転居用意を始めた人、新居のために家具をあつらえた人、など大迷惑な話です。
「これがポシャッタので次の物件を探すべ」というわけにもいかず、消費税だって上がってしまいます。

売り主側に目を向けても営業マンは大変です。購入者一人一人に丁寧に対応し、できるだけ被害や迷惑を最小限にしなければなりません。まったくお気の毒な話です。胃がキリきりと痛みそうです。
このプロジェクトに関わった皆が被害者です。

でも不謹慎かもしれませんが、流石に三菱地所です。すべてをデリートして損害も賠償してキチンとしたものに造り替えるというから拍手喝采の大英断です。
もっとも10年くらい前に大阪で土壌汚染を隠ぺいしてマンションを販売し、あとで露見して社会的に大パッシングを受けた経験があるので、隠ぺいにはもう懲りているはずです。

もしこれが体力のない地場の売主やゼネコンさんだったらどうなったことやら。
この件を数人の売主営業マンや管理会社の友人に聞きました。
異口同音に「うちだったら、○○○ですよ、きっと」という返事です。
「本当は、△△△とすべきなんだろうが、○○○じゃないと、会社つぶれちゃうもんね。仕方ないかも」です。

懇意にしている建築士にも聞きました。
「こんな話が多くはあるわけじゃないけど、地場ゼネコンだったら、×××するんじゃない。実際に×××したって噂、聞いたことあるよ」でした。

△、○、×が出てきて、第3回天下一武闘会での、神様とピッコロ大魔王との会話に様になっちゃいましたが、おそらくこの件で三菱地所の評価は上がるんじゃないでしょうか。