マンション管理士の独り言・・・584

「タイルを貼るとこじゃないっしょ」

高級感を売り物にしているマンションでは、“総タイル貼り”なんていうのをキャッチコピーにしています。
確かに吹付仕様よりはタイル貼りの方が高級感はあるし、実際に建築コストもかかっています。
これから竣工を迎えるどっかのマンションみたいに、エレベーターでお目当ての階に付いてホールに出たら、たった一枚のタイルさえ貼っていないというまるで“木賃宿マンション”に比べたら、タイルを貼っているマンションには随分と高級感があります。

でも高級感を出すために辺り構わずにどこにでもタイルを貼ればいいかと言うと、そういうものでもありません。
例えば、玄関ポーチの天井やバルコニー上裏、更には開放廊下の天井にタイルは使用しません。
何故?って。落下したら危ないっしょ。
廊下を歩いていて急にタイルが落ちてきたら怪我しますよ。
バルコニーで洗濯物干していたら、上からタイルが落ちてきたらビックリしちゃいますよ。
だから一般的には玄関ポーチ天井やバルコニー上裏にはタイルは貼りません。
外壁のタイル貼りを大規模修繕工事の折に全部剥いじゃって、吹付仕様にしたマンションだってあったりします。

ところが、こんな初歩の初歩がわかっていない設計士がいたりするから呆れちゃいます。
兎に角高級感を出そうと、梁底にまでタイルを貼っています。
大規模修繕工事でこの梁底のタイルの浮きの補修は大変です。
作業員も落下を気にしながら慎重に工事しなくてはなりませんし、上を向いて手を挙げっぱなしなので、1日にそんなに何枚も補修できません。
おまけにドリルでタイルに孔を開け、ピンニングしようとしても粉塵がモロに目に入っちゃいます。

加えて深目地にしていたりするとなお一層大変です。
深目地というのは目地部分が深い所にあることを指します。つまりタイルとタイルの間の目地が詰まっていないのです。
タイルの厚み分だけ陰影が出て、高級感が醸し出されますが、目地が詰まっている(浅目地)と比べると、当たり前だけど接着強度が劣ります。

売主さんは早期完売のために高級感を醸し出そうとし、そんな売主さんの意向を組み入れて設計士さんは兎に角タイルを貼るのでしょうが、それらの維持メンテナンスを行う管理組合さんは大変です。

管理組合さんは大変ですが、管理会社さんだって大変です。フロントマンはそんな余計な設備や仕様のために汗をかかされっぱなしです。

子供用のシーソーが設備されていました。
大きなスプリングが下部についてる一人乗りのタイプです。地面への取り付け金具が少し錆びていました。もし遊んでいて遊具が壊れ怪我でもされたら大変です。
そこでフロントマンへ、「錆びているので、補修お願いします」と依頼すると、「こんなの付けられると後々管理会社は困るんですよね」です。
子供用遊具でさえ管理するのは大変です。
設備仕様をずっとずっと永い期間、維持メンテナンス、管理を行うのは管理組合だという事をもう少し考えて設計してほしいものです。