マンション管理士の独り言・・・619

「管理規約改正はお早めに」

管理規約の改正は特別決議とされ、議決権総数の4分の3以上の賛成が必要です。
この規定は強行規定なので、4分の3という数字を5分の4にしたり、反対に3分の2にしたりすることは出来ません。いじっちゃいけない数字なのです。

通常の議案は普通決議ですから総会参加者の過半数です。
まとめて言うと、100戸のマンションで1人が1戸ずつ所有していたとしいて、100議決権。総会は議決権総数の半数以上の参加者で成立し、その参加者の過半数の賛成で通常の議案ならば承認されます。つまり最低では26の賛成で承認となるのが普通決議です。総会参加者の過半数と言うのが普通決議の承認要件です。
これに対し特別決議は総会参加者にかかわらず、議決権総数の4分の3が承認要件です。75の賛成が必要です。とてもハードルが高いのです。
3分の2の承認が要求される憲法改正より難しいのです。

平成25年度のマンション総合調査では、委任状や書面による議決権行使者を含めて総会への参加者平均は79,4%です。
管理規約を改正するためには総会へ参加する人のほとんど全てが賛成しなければ承認とならないということです。
そして総会への参加者は年を経るごとに低くなっていく傾向にあります。

マンション組合員が保有している管理規約は、組合員が集まって議論し、成文化したものではありません。
マンションを購入してすぐに顔の知らない皆で集まって管理規約を成文化するなんて出来っこありませんし、そんな専門的知識なんてあるわけありません。
ですから、当初はマンション売主や管理会社が標準管理規約をベースにいままでの経験や知識をもとに管理規約案(原始管理規約)を作成し、これにマンション購入者全員に署名捺印を求め、晴れて管理規約として発効するとなります。

永年マンションに住んでいるとこの原始管理規約では、現実のライフスタイルにそぐわないと言う点が必ず出てきます。
現実にマッチするように改正しなければいけませんが、これが特別決議でしかも年月が経過するほど総会への参加者が減ってきますので、とても難しいという事となります。
総会で決めればいいという訳にもいきません。
管理規約の内容と異なる総会の決議は無効です。
ですから何としても規約を改正しなければならないのですが、「管理規約改正=特別決議、そんなの無理」っていう管理組合さんが多いというのが実情です。
“特別決議何てはなから議案化しない”っていう管理組合さんも多くあります。
ではどうしているかって言うと、『暗黙の了解』“管理規約改正何て出来ないんだからあまり固いこと言うなよ”って感じです。

「マンション管理士のくせに管理規約が守られていない状態を黙って見てるのかよ」って言われても、無理なものは無理。
せいぜいこんなとこで、“なるべく早い時期に管理規約を改正しましょう”って呟くことくらいしか出来ません。