マンション管理士の独り言・・・757

「滞納管理費回収方法」

ご依頼を受けた管理組合の管理費などの滞納分については、全て回収しています。
人呼んで「サルベージ勝美ちゃん」です。
そのノウハウをちょっとだけつぶやいちゃいます。

まずは、時効を中断させることから始めます。
管理費などの滞納は、そのままにしておくと5年で消滅時効にかかっちゃいます。
払わずに5年間過ごせば、その滞納分はチャラになるってことです。
だから5年の時効をまずは中断させます。
法律的に有効な中断が実施できれば、中断したところからまた5年間が始まる、となります。

時効の中断方法として真っ先に頭に浮かぶのが内容証明郵便です。
しかし内容証明郵便は、時効の中断にはあまり有効な手立てだとは言えません。
内容証明郵便で時効を中断させるためには、送付後6か月以内に訴訟をおこして、そして勝訴すれば、内容証明を送付した時点に遡って時効が中断するというものです。
時間稼ぎにはいいのですが、内容証明郵便を送ったから直ちに時効が中断するってものではありません。

現実生活では内容証明を送ったり、送られてきたりっていうことはあまりないでしょうから、「内容証明が送られてきた。これは一大事だ。すぐに返済しなきゃ」っていう心理的プレッシャーの効果は期待できます。
もっともつぶやき主のように、頻繁に内容証明が送られてきたり、送ったりしている人にとっては、あまり効果ありません。

時効の中断に法律的効果が認められ、かつ簡便な方法としては、「債務の承認」というのがあります。
債務があるってことを滞納者に認めさせることです。
債務者に「私は○○月○○日現在、管理費などの滞納が○○○○円あります。へのへのもへじ」って書いてもらうのです。
書いてもらった時点で時効は中断されます。
或いは、全額でなくても1部の返済をしてもらっても債務の承認となります。
「一度に全額を返済するのは無理だろうけど、一部だけでも返済してよ」
「わかったよ。今日のところは1万円だけ返済しとくよ」となれば、返済された1万円は全体滞納額の1部返済と見なされますので、滞納額全体の時効の中断理由となります。

また、時効の効果は5年経過すれば自然と発生するってものでもありません。
18歳になれば日本国民なら誰でも等しく選挙権が与えられる、ってものではないのです。つぶやき主のように低額納税者であっても、性格悪くても等しく選挙権が与えられるって有難いものではありません。
時効の効果は、時効によって利益を得る人(この場合は滞納者)が、「5年経過したから時効を使います。」って言って初めて効果が現れるとされています。
これを時効の援用といいます。
滞納者が時効を使います、って言いだす前に、つまり時効の援用をする前に、管理組合で仏心を出して、「5年経過しているから、時効になっている分は請求しないでおこう」なんて考えなくていいものです。

管理組合で全額請求して、5年経過分を含めて返済してくれれば、それは有効な返済となります。
あとで滞納者が「全額請求が来たから支払ったけど、5年の時効になっている分まで支払ってしまった。5年の時効になっている分は返済しなくて良かった。その分返してよ。」
と言ってきても返却する必要はありません。
「知らなかったアンタが悪い。」となります。

滞納管理費回収法は、次回もう少しつぶやかなきゃ、です。

へのへのもへじ、ってわかるかな?