マンション管理士の独り言・・・788

「ライフサイクルコスト」

建物が竣工してから、それぞれの用途で何十年も使用され、老朽化し解体撤去されるまでを建物のライフサイクルコストと呼びます。
一般的には、建物維持管理メンテナンスに要する費用は取得費(建設費)の3~4倍も必要だと言われています。

大まかな割合は、建築費が15~20%。光熱費も同じく15~20%。
保守点検費用が10~15%。清掃費用が10%程度。修繕費が10%程度だと言われています。
この修繕費には設備の取り換えは入っていませんので、マンションならばエレベーターリニューアル費用や給排水管更新費用などは別途必要です。
また、修繕費に関して適切な時期に行われるという事が前提ですので、例えば鉄部塗装で錆びついてしまって肉厚がなくなり、補修では効かず取り換えとなると金額も大幅にアップすることが考えられます。

マンションを購入する際は取得費だけに関心を寄せるのではなく、今後その建物を維持していく上で維持管理メンテナンスの費用が必要になるということも頭の隅に置いておかなければなりません。
出来るだけメンテナンスしやすいような、或いはメンテナンスにお金のかからないようなマンションを選ぶというのもアリかな、です。

代表的な例としてよく取り上げられるのはエレベーターです。
エレベーターが多いとメリットとして、「待ち時間が少ない」「角住戸を増やせる」「マンション自体に高級感がある」などがあります。
しかし、デメリットとして「保守メンテナンス費用がフルメンテナンスで1基月額60,000円程度必要」「30年くらいでリニューアルとなり、1基800万円くらいかかる」「1階住戸の方からエレベーター使用してないからその分管理費を安くしてくれとの苦情が出ることがある」などがあります。
まさか、エレベーターのないマンションなんて今時あり得ませんが、必要以上の台数も考え物です。

また、いたる所に自動ドアのあるマンションを見かけますが、自動ドアのメンテナンスも1基月額3,000円くらいかかりますし、自動ドアエンジンも20年くらいで取り換えで30万円くらい必要です。
あまりお金のことばかりつぶやくとミミッチイ人間だと思われそうです。

大規模修繕工事時には足場を掛けます。この足場を掛けるスペースがないマンションが結構あります。
「新築時には足場を掛けて工事しているのだから大規模修繕時に足場を掛けられないなんてあり得ないっしょ!」と思われるかもしれませんが、そうでもないのです。
新築時には足場を掛けて工事し、建屋工事が終わったら上から順に足場を解体しますが、解体後に植栽や外構の工事が始まるのです。
今まで足場が立っていた場所にブロック塀が作られたり、専用庭になったり、大きな木が植えられたりして足場を建てる場所が無くなっちゃうのです。
大規模修繕時の事まで考慮に入れて設計をしてもらえれば有難いのですが、残念ながらそんな事全く考えてないようです。

無理して立てるので、その分足場の費用が高くつきます。管理組合負担です。