マンション管理士の独り言・・・832

「区分所有者がお亡くなりになった」

会計担当理事の方からお電話がありました。
「○○○号室の方の管理費などが引き落としになっていない。金融機関から送られてきた引き落とし書には、「本人死亡により口座凍結」と記載されている。どうしましょうか?」
というお問い合わせです。
この管理組合さんはもう8年近くお世話していますので、区分所有者の顔とお名前が一致するほど皆さんと親しくなっています。
○○○号室の方は、70代の不在区分所有者で、会社を経営されています。

以前から、“いつでも会社へ電話していいよ”って言われていましたので、お電話してみました。
「△△マンション管理組合の者ですが・・・」。
それだけで話が通じました。昨年11月にお亡くなりになったそうです。
お元気そうだったのに・・・。
まだ相続人間で、遺産分割協議が整っていないようですが、そのお会社あてに請求書をお送りし、お振込いただきました。
口座は凍結されていますので、今後は毎月お振込いただくこととなりました。

区分所有者さんが亡くなった場合、管理組合で不祝儀を包むようにしているところもありますが、この管理組合さんではそのような取り決めもないので、一応顛末を理事長へご報告して終了です。

ご夫婦のうちどちらかが亡くなられても、もう一人がいらっしゃるので問題になることはありませんが、お一人住まいの方が亡くなると管理組合は大変です。
区分所有者が亡くなると、相続放棄しない限り法定相続人が相続人となり、その相続人に管理費などの負担義務が生じます。
基本的には法定相続人が3名ならば、それぞれの法定相続分割合に応じた額を請求するという面倒くさいことになります。
しかし、実際は相続人のうちのどなたかに全額請求するというのが一般的な扱いです。

でもこの相続人のうちの一人でも見つけ出す、探し出すことは一苦労です。
「○○○号室の区分所有者が亡くなりました。私の母だったのですが、今後は法定相続人の私が管理費などを負担します。」なんて連絡してくれる方なんてほとんどいません。
ご親族がお亡くなりになってマンションの管理費どころじゃないことは、十分にわかりますが、管理組合としてもキチンと手続きをしてもらわなきゃ、です。
“親族が亡くなって、まだ悲しみに暮れている。こんな時になんだ!”って思われない時期に、連絡して手続きをお願いすることとなります。

高齢・独り暮らしの区分所有者に対して、お亡くなりになった後の法定相続人の連絡先を事前にお聞きできればいいのですが、いかに厚かましいつぶやき主だってなかなか言い出せません。
しかし、今後はこのような事例がどこのマンションでも増えてきます。
当たり障りのないような工夫を考えなきゃ、です。

それでも今回のケースは、相続人の方がいるから「まだまし」と思わないといけないか知れません。
もし相続人がいなかったり、いても連絡がつかなかったり、或いは相続放棄なんてされちゃうと、管理組合はとても大変です。
“ゾッとします”