マンション管理士の独り言・・・919

マンション管理士の独り言…919

「議案承認とならない複雑なわけ」

今期理事長さんが、頑張って管理費の見直しを行いました。
管理会社のサービスやフロントマンのフットワークも今一つだったので、前回総会で管理会社の見直しも検討します、と報告していました。
そして共通仕様書で管理会社数社から見積もりを取得しました。
もちろんその数社には現在の管理会社さんも入っています。
こんな時は現在の管理会社さんをはじめから排除するのでなく、入札に加えるのが鉄則です。現在の管理会社さんの新たな見積もりは間違いなく以前のより安くなっています。
ですから、もし管理会社を変更せずに現在の管理会社さんのままであっても、管理委託料は引き下げられることになります。
また、現在の管理会社さんを他社へ変更となれば、“現在の管理会社さんにも見積もりに参加してもらいましたが、他に安いところがあったのでそこにお願いすることにしました”として言葉に説得力を持たせることが出来ます。

通常ならば、これで議案承認です。数社から見積もりを取って、その中で1番安いところに決めました。でメデタシ、メデタシ、です。
ところがそうもいかないところがマンションの複雑なところです。

この管理組合さんでは、今回の管理会社見直しが2回目です。
分譲当初の売り主「お仕着せ」の管理会社さんのフットワークやサービスが悪いので、数年前に当時の理事会さんが頑張って共通仕様書で数社から見積もりを取って現在の管理会社へ変更したという歴史があるのです。
そんな経緯がある中で今回の管理会社変更の議案が提出されました。
当時の役員さんは、一生懸命頑張って、管理組合のために、組合員のために、良かれと思って現在の管理会社さんに変更したのです。
そんな努力を消し去るかのように、今回の総会では、「管理会社変更」という議案が提出されているのです。

当時の役員さんたちは面白いわけがありません。
“管理会社のフットワークやサービスが悪いわけがない”“現在の理事会がフロントマンを上手に使ってないのでは?”“本当に現在の管理サービスより良くなるのか?”などのネガティブな意見が噴出しました。

この議案は、普通決議ですから、通常の場合は総会が有効に成立していれば、採決すれば間違いなく承認されます。
何といっても議案提出者である理事長を受任者にした委任状が幅を利かせます。
理事長は議案提出者であり、“その議案を承認してね”って立場ですから、理事長に委任イコール賛成と同じです。

しかし、強烈な反対意見を前にして、“管理費削減のためにいい提案をしてくれた。ご苦労様でした”と満場一致で承認となることを予想していた理事長には驚きの展開です。
“こんなはずじゃなかった”と採決は行わず、継続審議としました。

「管理組合の意思決定は、ただ単に金額が安い方が選ばれていく」という大原則にも例外があるということをつぶやき主も教えられた総会でした。