マンション管理士の独り言…653

「大規模修繕工事の落とし穴」

築12年過ぎたあたりのマンションで大規模修繕工事が行われます。
つぶやき主の事務所近くでも足場を組んでネットを張って大規模修繕工事が行われているマンションがいくつか見かけます。
つぶやき主も現在2つのマンションで大規模修繕工事のコーディネートを行っています。
設計は、つぶやき主のお眼鏡にかなった現場経験たっぷりの建築士さんとのコラボです。

前回の「リビング北九州」のマンショントラブル相談室でも書きましたが、大規模修繕工事の業者決定には何より透明性・公平性・公開性が必要となります。
共通仕様書を作成し、数社から見積もりを取得し、数名の役員の前で一斉開封とするのがルールです。
そして2~3社に絞りプレゼンテーションを実施し、理事会で1社を選定し、総会で承認を得るという流れになります。
「理事会で検討した結果、○○建設会社へ○○の内容で、○○の金額で発注することについてご承認ください」という議案の提出になります。

業者決定の基準は、兎に角1番安いところとしている理事会さんが多いようです。
総会で承認を得る際にも「いろいろと検討した結果、A社が一番安かったのでA社に決めました」というトークはとても説得力があり、総会でもスンナリと承認されます。
「B社より安い業者はありましたが、施工実績などでB社へしました」「B社は価格は高かったけれども工事期間中の防犯についての気配りが一番でした」「B社の現場代理人が一番話しやすそうだったので」なんていうのは、『1番安い所に決めました』というトークにかき消されちゃいます。

そのような管理組合の意思決定の仕方を分かっていて、競争入札では兎に角1番安い金額を提示してくる業者さんがいます。
他の業者さんと比べ群を抜いて安い金額を提示します。そして受注します。
ところが工事が始まったとたん、追加工事などで驚くような高い金額を吹っかけてきます。大規模修繕工事の場合、足場を組みますので、足場がある際にやっていた方が良いと思われる追加工事が発生することが多いです。
そんな追加工事で利益を出し、当初安く受注した分を取り戻そうとするのです。
管理組合さんからすれば、その業者さんへ発注するしかありませんので、業者さんの言うがままの金額となってしまいます。相見積もりを取るなんていうのさえ出来ません。

そして大規模修繕工事が終わって蓋を閉めてみれば、“初めは安いと思って発注したけど、追加工事にかなりのお金がかかって、総額では入札した他の業者と比べても全然安くなかったジャン”となるケースを沢山見てきました。
管理組合さんとトラブルに発展するケースも出ています。

一番安いところに発注するのはイイ、追加工事が発生するのも仕方ない、ですが高額な追加工事を請求されないような工夫が必要です。
見積もり段階や工事請負契約書でちょっとした工夫が必要です。
さらに支払いについても工事途中で請け負った建設会社さんが倒産するリスクを避ける工夫が必要です。
つぶやき主は工事代金は竣工後一括払いとして、契約金や着工金を支払わないようにしています。
組合員の皆さんがセッセと積み立てた修繕積立金で工事しているのに、契約金、着工金を支払って着工したのはいいが、工事途中で工事業者さんが倒産でもしたら、大変なことになっちゃいます。

この辺りは、設計士やコーディネーターの腕の見せ所ですが・・・。