マンション管理士の独り言…710

「総会での理事長の立ち位置」

毎月のように通常総会や臨時総会に出席しています。
総会では理事会が検討した案が上程され、それを審議し承認を得る作業を行います。
理事会で色々と検討した結果、“この案が良いと思われるのでご承認下さい”という流れです。言い換えれば、「理事会ではこの案をお勧めですよ、この案が良いと思いますので承認して下さいね」というスタンスってことです。
間違っても、「あんまり良い案とは思わないけど、取り敢えず上程してみた。」「本当はこっちより別の方法が良いと思うけど、こっちで良いという人が多いかも知れないから」というスタンスはあり得ません。

総会の1~2週間前に配られる議案書には委任状も添付されています。
「総会当日都合の悪い人は、委任状を提出してね。委任状を提出した人も総会に参加した人としてカウントしますよ」です。
委任状には委任する相手方も記載するようになっています。
仲のいいお隣さんを受任者とする方も稀にいますが、多くの場合は“理事長へ委任します”です。
この理事長への委任というのは、“その議案を検討してこの案が良いと思うから承認してよ”って人への委任となりますので、全ての場合と言っていいほど、賛成票になります。
委任する人も“その議案を上程した人だから、その議案には賛成だよね”って思って委任するのが普通です。
理事長へ委任=賛成するって図式です。

ところが、ごく稀にその議案には反対なのに、上程してしまう理事長さんがいます。
上程してしまう原因は、多くの場合予算との兼ね合いです。
「この管理組合のためには上程すべきじゃないけど、予算が足りないから仕方ないよな」という感じです。
「上程したくないけど、予算内から無い袖は振れないし、上程するしかないよな」って事です。

そんな理事長さんの腹のうちなんてわからずに多くの方が理事長さんに委任します。
総会では理事長さんは悩みに悩みます。
「自分が中心になって上程した議案に対して、まさか反対できないよな、かと言って、この議案は管理組合のためには承認させたくないし」です。
「管理組合のためには承認させたくない、だけど予算がないから仕方なく上程する」って議案のほとんどがマンション管理士の顧問契約継続に関してなのが辛いとこです。
間違いなく、いただいているフィー以上の利益を管理組合さんへもたらしていますが、小さな管理組合さんでは顧問料は結構な負担となります。

売主さんが“売らんがため”に分譲当初は低い積立金の設定をしていて、“それでは大規模修繕工事時に不足しますよ、積立金の値上げをしなきゃ”ってアドバイスします。
積立金の値上げ案を上程するのならば、過剰と思われる管理サービスを廃止したり、業者さんから競争見積もりを取ったりして管理費の削減をすることが前提となります。
管理費削減を行ってその上で、積立金の値上げを議案化しなければなかなか承認が得られません。
その削減過程で、「マンション管理士との顧問契約」というのが検討項目としてあがってきます。
「過剰なサービスを廃止しなきゃ。管理費削減しなきゃ積立金の値上げは承認されないっすよ」と言った手前、「マンション管理士との顧問は継続しなきゃ」なんて厚かましい事は言えません。

かくしてまた顧問先が減りそうです。

余計な事言わなきゃ良かった・・・。