マンション管理士の独り言・・・957

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「免震ダンパー、制震ダンパー不正」

KYB製造のダンパーが検査結果をごまかし、基準を満たさないまま分譲マンションはじめ全国各地のいろんな建物に納入され、実際に設置された事件が連日のように報道されています。全部で1000件を超えそうというので開いた口が塞がりません。

悪いことしたのはKYBで、AKB、SKE、HKT、PPAPやTTPじゃありません。
ましてやPTAでもありません。
最近はこの手の横文字の略称が多くて訳わかんなくなります。

公の建物や病院などについては、基準を満たしていないダンパーを設置した建物の名前は公表していますが、分譲マンションについては資産価値の低下を招くのか何かわかりませんが、まだ公表していないようです。

北九州で、免震・制震ダンパーを使用している分譲マンションは、もうすでに完成しているものでは、小倉北区ではポレスターリーモ、ダイワDCタワー、八幡東区のネクスタージュ高見弐番館です。
現在小倉駅横に建設中の積水ハウスのザ・ガーデンシティ小倉は免震と制震の2つの工法を取り入れたハイブリッド(センター長曰く)なので、ここにもダンパーが複数使われています。
これら建物にKYB製のものが使われているかどうかは不明ですが、購入者からすればいい迷惑です。購入者のみならず、売主デベさんや施工ゼネコンさん、設計士さんから見ても、“冗談じゃない。勘弁してよ”って話です。
でも何と言っても大迷惑を蒙るのは購入者です。

都知事の小池さんが、東京オリンピックに間に合わせる様、急いで対応するように注文を付けましたが、このようにトップダウンで意思表示できればいいのですが、マンションの場合はこのようには行きません。
購入者それぞれが所有者で共有持ち分者だからです。
皆の意見を集約し、合意形成を諮らなければいけないからです。
合意形成のためには、あちこちで発生する温度差を解消しなければなりません。

制震ダンパーは建物内に設置されていますので、該当住戸の一時的引越しなども不可欠です。引越ししなければならない居住者と、しなくても良い居住者とでは当然ですが、この問題に対して温度差が生じます。
さらに、“取り換えてもらえれば、それでいいよ”って意見もあれば、“悪いところがあったから、取り換えますで済むのかよ。損害賠償も請求しなきゃ”という意見も出てきます。
ここでも温度差が生じます。
区分所有者それぞれの考え方や居住している住戸の位置、金額、家族構成、売主への信頼度など様々な要因により、アッチでもコッチでも、いたるところで温度差が生じます。
これらを取りまとめる理事会もしくは対策委員会は大変な作業になります。説明会や総会は何度も開かなくてはなりません。
穏便派と強硬派との狭間で頭を抱えて、途中で投げ出す役員さんが出ることも十分考えられます。

今から5年前の2015年に発覚した免震ゴム検査データ書き換え事件では、その後被害にあった分譲マンションで免震ゴムの取り換え作業が進んでいるようですが、まだ6割しか終わっていないようです。
住民間の合意形成に基づく管理組合の方針が定まらない事もその一因のようです。

同じく鉄筋コンクリートの建物であっても、分譲マンションだけは他のものと全く違います。区分所有者の数だけ建物があると考えなきゃ、です。